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2016.06.27

「エレファント・マン」の件

私のお気に入りの映画監督に、デビッド・リンチという人物がおります。日本ではテレビドラマの「ツイン・ピークス」の監督として一般にも知られているかと思います。
もともとは「イレイザー・ヘッド」という映画でデビューしていて、この映画もカルトムービーの傑作と言われています。資金調達のために何度も中断しながら4年間の月日をかけて制作したというのですが、これはこれですごい映画です。リンチのエッセイに書いてあったのですが、誰かがスタンリー・キューブリックの自宅に招かれた時に、「おれが最近気にいっている映画を一緒に観ようぜ」という話になって、上映したのが「イレイザー・ヘッド」だったと。好き嫌いの分かれる作品なので、私は上映会は開きませんが、個人的にはかなり好きです。

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「イレイザー・ヘッド」 お前も消しゴムにしてやろうか!

「イレイザー・ヘッド」は、コメディ映画の大御所であるメル・ブルックスの目にもとまっていたようで、メル・ブルックスはリンチの次回作をプロデュースしたのでした。それが、なぜか「エレファント・マン」なんです。全然コメディじゃないんですけどね。
「エレファント・マン」は、結構有名だと思うのですが、奇病といっていいのか、見た目がグロテスクなメリックという青年がスラム街で見世物にされているのを、医師が救うんです。メリックは医師やその周りにいる上流階級の人々たちに大切にされて、自分が怪物ではなく人間だという意識を持つ、というヒューマンドラマです。デビッド・リンチというと、「ブルー・ベルベット」や「マルホランド・ドライブ」、「ロスト・ハイウェイ」といったスリラーの印象が強いのですが、ヒューマンドラマを撮る手腕もあって、「ストレイト・ストーリー」という映画も大ヒットしました。ただ、そういう一般受けする映画はファンの中ではあまり話題に上らないです。

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「エレファント・マン」 Bookoffで100円くらいで買えそうなデザインが悲しいです。

でも今回は一般受けするヒューマンドラマ「エレファント・マン」の話です。というのは、つい先日観なおしたばかりなので。
この映画の面白いところは、社会的弱者であるメリックが医師に救われた後で、上流階級の人間がみんなメリックの風貌を見ても嫌がらないんです。むしろ、深く同情して目に涙を浮かべたりもするんですね。逆にスラム街にいる下流の人間は客から金をとって、メリックのところに連れてきて、怪物見学会みたいなことをする。この対比がとてもわかりやすいです。ちなみに医師を演じているのはアンソニー・ホプキンスです。「羊たちの沈黙」のレクター博士ですね。でもメリックは殺されないです。それはいいとして、上流と下流の対比として、物語の最後に、メリックは劇場に招かれて観劇するんです。今までは自分が見世物だったのに、上流階級では観劇する立場になっているという。

どうしてリンチはこういう対比を作り上げたのだろうか、と。これは私が勝手に考えたんですが、リンチはエレファント・マンことメリック青年に自己投影しているのではないかと。彼はかなりエキセントリックな人なので、周囲から変人扱いされていたことは想像に難くないです。つまり、それがスラム街にいるメリックの姿で、映画界が自分の才能を認めてくれた、というのが、彼を受け入れてくれる上流階級なんですね。なにしろ彼に優しくしてくれる女優を演じているのがアン・バンクロフト、つまりメル・ブルックスの奥さんですから。「メル・ブルックスがおれを認めてくれたんだぜ!」くらいの気持ちはあったかもしれません。

こうして考えてみると、「エレファント・マン」はメリックが救済を得る物語ではありますが、リンチ自身にとっても大きな意味を持つ映画だったのもしれません。この後、リンチは「スター・ウォーズ」のオファーを断って制作した「デューン 砂の惑星」を映画会社にずたぼろにされます。そして、名作「ブルー・ベルベット」で復活を果たす。

ちなみに「デューン 砂の惑星」は、かなり酷評されていますし、色々な人の突っ込みを見聞きするに、かなり的確な指摘だったりもするのですが、「スター・ウォーズ」にはない、中世貴族風のインテリアなんかがかっこいいし、女優も素敵な感じでした。

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「デューン 砂の惑星」 美しいヴァージニア・マドセン。googleで検索するのはやめておきましょう。

御大は「インランド・エンパイア」以来、劇場用映画を作っておらず、ファンとしては寂しいところです。絵画や音楽の方面では活発に活動されているんですけどね。

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