Home > 冨田 涼
2021.09.09

坂本龍一+高谷史郎《water state 1》

東向島でおこなわれたインスタレーション。
内容としては、会場の中央に水を溜めた装置が設置してあり、天井近くから落ちてくる水滴が波紋を作る。会場には環境音楽が流れていた。1セッション30分程度のシンプルな内容。
もともとは、坂本龍一が東向島でインスタレーションを開催するという組み合わせに興味をおぼえて足を運んだが、いってみると 展示そのものもよくできていた。

装置に張った水は隅田川の水だそうだ。
天井近くからぽたぽたと水が垂れてきて、波紋ができる。それだけではあるが、全体を見てもいいし、水面の一部を眺めていてもいい。水面は常に変化する。そしてその変化にはパターンがない。この流動的で不確実というところにこのインスタレーションの面白さがあると感じた。

装置の周囲には石が置かれていた。
これは庭を意識しているのだと思う。
個人的には禅寺を連想した。このインスタレーションには禅的な空気があり、日本人の作るアートとして、特徴を打ち出すことに成功していると感じた。

この会場内で流れている坂本龍一の音楽は、先述のように、環境音楽的なものであり、メロディのあるものではない。こういう耳に残らない、その場の空気を醸成するような音楽も作れることを知り、改めて坂本龍一の音楽的才能を認識した。

2021.04.19

レヴェナント: 蘇えりし者

「レヴェナント: 蘇えりし者」は、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督が2016年に撮った作品でアカデミー賞もいくつか受賞している。

内容はいちおう西部劇ということになるのだろうか。
1923年アメリカ。西部開拓史時代。罠猟師のヒュー・グラス(レオナルド・ディカプリオ)が、あることの復讐のために、ジョン・フィツジェラルド(トム・ハーディ)を追う、というもの。

アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督は「バベル」「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡) 」を観た。社会的なメッセージを、巧みなプロットで提供する監督という印象がある。本作を含めて3作品を観た印象では、イニャリトゥ監督はいつもよそものとしてハリウッドにいて、その心理を作品に反映しているように感じる。
本作で、ディカプリオが演じるグラスは、ネイティヴアメリカンの女性との間にこどもを設けた男であり、罠猟師の仲間のうちでも、そのことをよく思っていない人間もいる。要するによそ者なのである。
「バベル」では誰もが異邦人であったし、「バードマン」でも、ブロックバスタームービーの「バードマン」役で人気を得ていたマイケル・キートンがブロードウェイで栄光を取り戻そうとしながらも、舞台俳優たちからは「ハリウッドスターに本物の演技など語れない」と忌み嫌われるのだった。

「レヴェナント」に話を戻すと、テレンス・マリックの常連撮影監督エマニュエル・ルベツキが撮影を担当しており、作品の成功に貢献している。ルベツキの映像は、美しく、かつ挑戦的だ。どこまでが自然で、どこまでが加工なのかわからない。
テレンス・マリック監督の「聖杯たちの騎士」では多種多様な撮影技術を投入していたが、本作では大自然をいかに撮影するかという点に腐心している模様。とはいえ、技巧の限りを尽くしているのは観るとわかると思う。

このように、いろいろな点でみどころがあり、深堀していくと面白い作品である。

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