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2022.08.31

信じるかどうか、それが問題だ。

海外を旅していると、人を信じるかどうか選択を迫られる場面が多々ある。
特にバックパッカーをしていると日常的なことである。

国内を含めて初めて一人旅をしたエジプト旅行でのことである。
カイロ市内からギザやサッカラのピラミッドに行くべくタクシーをチャーターした。
人の良さそうなおじさんと交渉すると、旅行者相場の最低料金でOKしてくれた。
追加料金を請求されることも、「通貨単位はエジプトポンドではなく米ドルだ」と言われることも無く、無事終了した。

ルクソールやアスワンを旅してカイロに戻り、再びピラミッドに行くことにした。
交渉した若いドライバーが私の名前を聞いて、「この前君を乗せたのは俺の親父かも」と言う。
呼ばれてやって来たおじさんは確かにこの前お世話になったアハメッドだった。
息子から親父にバトンタッチして2度目のドライブに出る。

それからというもの、普通は絶対にタクシーでなんか行かないスエズ運河やアレキサンドリアを日帰り旅行したのである。ガソリン代だけ出してくれればタダで良いというので。
流石に遠くて、朝早く出て夜遅く帰る強行軍である。楽ちんだけど。
夜の砂漠道を月に向かって「ホッホホーイ!」と叫びながら爆走する。
他の車をほとんど見かけないので、故障したらどうするんだろ。。。

そして、最後にドライブした明後日が帰国の日だった。
アハメッドが空港までタダで送ってくれるという。
でも、ホテルを夜明け前の午前5時に出なくてはいけないので、大丈夫だろうか?

帰国日前夜。
フロントで早朝にチェックアウトすることを伝えると、タクシー手配するねと言われる。
事情を話すと、「来ないよ」とアッサリ断言される。
確かに、約束の時間に来るのは世界的にはレアなことである。しかも、夜明け前。。
結局、もし来なかったら直ぐタクシー呼ぶからと言ってくれた。
飛行機に乗り遅れるわけにはいかないので、だんだん不安になる。

そして、帰国当日。
チェックアウトして、フロントに「いなかったら直ぐに戻ってきな」と言われ外に出る。
自分も、いなければ諦めてすぐ戻る気になっていた。
ホテルの玄関から車の走る通りまで歩く。
すると、人気のない暗い通りの向こうに1台のタクシーが見えた。
近づいていくとアハメッドだった。
ホッとして乗り込むと、彼の目が赤い。
どうしたのかと聞くと、「寝坊したら大変だから、昨晩からここにいた」と言う。
その言葉を聞いた瞬間、僅かでも疑ったことが申し訳なく、自分を恥じた。

人を信じるには勇気が要る。
その後の旅で幾度となく直面する課題のスタートだったかもしれない。
同時に、帰国前夜にお別れ会を開いてくれた同世代のエジプト人の仲間たちも含めて、
一人旅にとりつかれた原点の旅であった。

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